春や昔の春ならぬ

変わりゆくすべてに袖を濡らすブログ

浅田真央の色気

「18日に復帰宣言来るらしい(関係者談)」

先週、TwitterのTLが一気にざわっとした。
オリンピックは4年に一度だから、その都度に世代交代が起こるのが常なのだけれど、
バンクーバー五輪後の引退組が(特に日本は)少なかったからか、
わたしたちは好きな選手たちの活躍を長く見守ることができた。
その分、ソチ五輪後に、選手が軒並み表舞台から降りてしまった2014-15シーズンは、
大きな喪失感を抱えたまま迎えた人も多かったのだと思う。

いや、厳密に言えば、日本人選手を応援している人にとっては、
ソチシーズンの後半から、それはもう、心が痛くて痛くてたまらなかったはず。

全日本後のMOIで、織田くんが突然に、引退宣言。
その夜、Twitterには、#永遠の3BK(バカ)というハッシュタグとともに、
その名の由来となったバンクーバー五輪閉会式で大きな風船を追いかける写真を筆頭に、
高橋・織田・小塚の3人の写真がツイートされ、TLはものすごい勢いで流れた。

美姫も、明子ちゃんももリンクを去った。
1年休養宣言をした高橋くんも、去年の10月に引退。
町田くんは、全日本後のワールド代表発表の場で前代未聞の引退宣言。

羽生くんがどんなに活躍しても(しかも途中から災厄続きだったし)、
宇野くんや理華ちゃん、知子ちゃんの驚異的な成長にも、
大好きなロシアンガールズの飛翔にも、
もちろん頭は喜んでいたんだけど、心には大きな穴が傷口のように残っていて、
新しい選手たちの活躍が起こす風に、ひりひりと傷が痛んだ1年だった。

わたしのフォロイーさんたちは、「スケーターみんな大好き」を表明している人たちだから、
例えもう二度とコンペの舞台で真央が見れなくても、
真央が幸せならそれでいいよ、どこかで幸せで生きててくれさえすれば、
というスタンスを取っている人がほとんどだったけど、
あの、

「復帰来るかも」

の1行は、TLを一気に薔薇色に染めたし、
やっぱりそういう華のあるスケーターなのだな、と改めて力強く再確認させられた瞬間でもあった。
それくらい、みんな、心の底から真央を待っていたし、
喉が渇くように、お腹がすくように、真央を欲していたのだと思う。

もちろんあの場は、TheICEの会見だとは分かっていたし、
そもそも(関係者談)って何だよ、また(関係者)かよ、ってのもあった。
周りが、復帰復帰言うことで、もしかしてまだ決断できてないのにそれで追い込まれて
自分の望まない決断をさせてしまったらどうしよう、なんて考えたりもした。

でも、そんなのは杞憂だったね。
わたしが思う以上に、しっかりとした大人の言葉遣いで、いつもどおり、浅田真央浅田真央だった。
自分で考え、自分で納得し、自分の言葉で、彼女はいつも話してくれていたのに、
ファンがそれを信じないでどうするのだ。

マスコミはまた、五輪は、とかGPSは、とか言うだろうし、
知子や理華とのライバル関係がどう、とかリーザとの3A対決、とか煽ってくるんだろうけれど、
(今から全日本が怖い)
気持ちはもう織田くんが全部代弁してくれた。
「また、試合で真央ちゃんが見られる、わーい!!でいいじゃないですか!」
和んだわー。織田くん素敵すぎる。
もう女子の解説も織田くんでいいよ。

さて、TheICEの会見では、毎回素敵なワンピでわたしたちの目を楽しませてくれるわけですが、
今回も今回でとっても可愛かった。
FOXEYぽいなーと思って検索してみたけど、同じのは見つからなくって、
海外ブランドかなーともやもやしてたら、どっこいFOXEYだったらしい。
襟とウエストの切り替えの白いパイピングが映えて、
ボトムラインもちょっとコクーンっぽくて、バックスタイルもそれはそれは可愛らしかった。
欲しいなーと一瞬浮き足立ちましたが、どうやらオーダーらしく、まぁ、そうだよねとちょっと意気消沈。
ともあれ、1年コンペをお休みしてほんの少し丸みを帯びた身体になった真央に、本当によく似合っていた。

ここで、思い出したのだ。
彼の言葉を。

いつの頃からか、「セクシー」が代名詞のように使われ始めた高橋大輔が、
「セクシーだと思う選手は?」とインタビュアーに訊かれ、
挙げた名前のひとつが、浅田真央だった。
「真央には、誰にも出せない爽やかな色気がある」
彼は、当たり前のように、さらりと言った。

今までは3Aが跳べるというのを強みにしてきたけれど、
これからは大人の滑りも見せられたら、と真央は言った。
大人の滑り、なんて言葉を出せば、週刊誌あたりは「大人の色気」とか「セクシー路線」とか、
そんな下世話な書き方を今後するかれない。

現に、いつだったか、とある有名人がTwitterで、
「真央ちゃんには色気がない、もっと大人にならないと」
と、実際にはもっと俗物的な言い回しで発言し、炎上したこともあったし。
しかも彼は30歳以上年下の女性と再婚。
その相手の年齢が真央に近いこともあり、そのニュースを知ったときは、素直に気持ち悪いなと思った。

真央は、言ってみれば「国民の妹」みたいな位置づけにあるとも言えるし、
幼い頃から成長の過程を見ているからこそ、そういう目で見ること自体、タブーのような気がしてしまう、というのもある。
 
また、別に、歳を重ねれば若い者に惹かれる気持ちも分かるし、
お互い成年同士だし、歳の差については好きにすれば、と思っていて、
気持ち悪いと感じたのは、アスリートを性的な視点で評価し、
いや、それだけならば、自分の胸の中では勝手にすればと思うけれど(嫌だけど)、
そんな、独り言か、お酒の席の戯言で済ませておくべき(とわたしは思う)ことを、
SNSで発言してしまう、という感覚のズレ。
もちろん、逆もそうで、女性ファンが男性選手について性的な語りをするのを聞くのも、とても気持ちが悪い。
だけど真央には、色気があるのだ。
悔しいことにうまく言い表せないし、セクシャルなものでもセンシュアルなものでもないのだけれど、
確かに、真央には色気があるのだ。

それを、高橋くんが、考え込むでもなく、滑らかに口にしていて、
そのとき彼を初めて格好良いな、と感じたのを覚えている。
宮本賢二先生との対談でも、「表現してるわけじゃなく自然に出てる、触ったらあかんような、繊細な色っぽさ。」
と表現していて、その部分だけでも全世界に配信したくなるくらい、ハラオチした。
高橋くんは(世間がどう思ってるかは分からないけど)語彙も少ないし、正直おバカなところだらけだけど、
本質的な部分を捉える野生の勘みたいなのが鋭く、
またインタビューや取材記事等からしか推し量ることはできないけれど、
全方位に気を遣い、常に誰も傷つけず、謙虚で、柔らかい言葉で、的確に自分の気持ちを紡ぐ人だと思っている。
割とアスリートが言いがちな、「感動を与えたい」という言葉も一度も聞いたことなくて、
いつも「何か感じてもらえたら、元気になってもらえたら」という言い回しをチョイスしていて、唸らされる。

スポーツライターさんや新聞記者さんたちが表現するのとはまた違う、
同じフィギュアスケーターだからこその感覚で、
浅田真央の色気」を、胸の奥がじんわりと温かくなるような言葉で形容してくれた。

チャリティー(東日本大震災チャリティ演技会@神戸)で泣いてたもんね、
と賢二先生に茶化されたのは、(これはその時のじゃないけど)、このプログラム。

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2011-12シーズンのEX「Jupiter」

チャリティについてはもっと話したいことがあって、
高橋大輔の名前が使えるうちは使う。使えなくなっても続けていく」とか、
「このチャリティの存在が気づかれなくても、知られなくても続けていく」とか、
高橋くんはときどきハッとすることを言ってくれて。
今日は真央のエントリなので割愛しますが。

2:25からの3F-3Loももちろんだけど、まず0:41~0:55のスパイラルでいつも涙腺が熱くなる。
お母さんが亡くなられたシーズンだったよね。
真央のプログラムで不動の1位は、2007-08シーズンのSP「Ladies in Lavender」なんだけど、
あれを初めて見たときの衝撃に近いものを感じたのがこのJupiterだった。

ラベンダーのイメージは、一言で言えば、「清冽」。
ジュピターは、「静謐」。

どちらのプログラムにも、静かな色気が漂っている、とわたしは強く思う。
これらを見てもなお、真央には色気がない、と言える人がいるならば、
きっと感じ方の方向性が、根本的に違う人なのだろうな。
もちろんそれは人それぞれだし、どう感じても、間違い、はないのかもしれないけれど、
わたしはこのプログラムを深く感じたいし、感じられることを嬉しく思うし、
高橋くんの表現する言葉に出会えて本当に良かったと思っている。

最後に、ラベンダーを。
1:20~のファンスパイラルが大好きだ。
このシーズン、本当に苦しんで、ファンにはつらいシーズンだったけれど、
思い出すと心も痛いけれど、だからといって見返さないのはもったいなさすぎる名プログラム。

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映画も大好きです。
マギー・スミスジュディ・デンチも大好き。