春や昔の春ならぬ

変わりゆくすべてに袖を濡らすブログ

どこがビッチだよ(ピースオブケイク)

この前、見に行ったよ!で終わったので改めて感想。

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原作は未読。
「映画見に行く」って決めてたから、こういう場合、原作を先に読んでしまうと残念感がきっと出てしまうので敢えて未読のまま見に行きました。

誰だよ、ビッチの映画とか言ってるやつ。

twitterでは、「絶対多部ちゃんじゃない」「頭の悪い女の子の役だから他の人がいい」「股の緩い主人公に全然共感できない」みたいな反応が結構あって。へーそんな役なんだと思って見たけど、全然そんなことなかった。
むしろ志乃には共感できるところばかりだった。

誰だよ、尻軽とかビッチとか言ってるやつ。
もしかしたら、原作ではそんな感じで頭の緩い子なのかもな、とも思うけれど、だとしたらそんなにファンが付くとは思えないし、「伝説的恋愛コミック」なんて謳い文句付けないでしょ。
しかも、映画を見た人が、主人公が尻軽、みたいなこと言ってるんだよー。
わたしが見たピースオブケイクパラレルワールドピースオブケイクなのか。

正直、「30過ぎてもまだふらふらしてるレンタルビデオ店の店長」を好きになる気持ちは全く理解できないし共感しないけれど、恋愛なんて人それぞれだし、みんながみんな同じ人好きになってたらあぶれる人多数で大変なことになっちゃう。
多部ちゃんも言ってる「主人公に共感」っていうのは、そういう部分じゃないでしょ。
相手がどう、とか、すぐ身体を許す、とかそういう付録的な部分じゃなくて、もっと恋愛の普遍的な部分。


彼女がいてもどうしても好きな人と大義名分のもとに一緒にいられる15分の大切さ、とか。
好きな人と気持ちが通じ合ったのに、一緒にいるのに不安になったりとか。
幸せのさなかにいながら不幸の準備(この言い方よく分かる)をしちゃうとか。
疑わしい気持ちがあって確かめたいのに(確かめたってどうにかなるものでもないのに)、一緒に旅行行きたい気持ちが勝つから本人に聞けずじまいなんだけど、結局気になって旅行したその夜にぶつけちゃう、とか。

これは恋愛あるあるだと思ってたので、ここに共感しない女性は多分、きっと自分をしっかり持ってて、地に足の着いた恋愛を最初からできてる人なんだろうなぁ。うらやましい。
ただ、複数人の男性と関係を持ってしまう女性を、生理的に受け付けない女性がいることは知ってるけど、そこに気を取られてこの映画のそういう部分しか目に入らないのは不幸、というかもったいないなーと思うくらいには、結構お気に入りの映画になりましたよ。
だって、身近なところに自分を好きで、別にセックスしてもいいかも(これが重要)、と思える男性がいたら、すごいつらいときとか寂しいときとか、思わず受け入れてしまうのは悪いことじゃないんじゃない。ましてや志乃は浮気じゃないんだし。現実には、この人ならしてもいいかも、と思える男性がそうそう身の回りにはいないだけで、実際にそういう人がいてしまったら、志乃の気持ちは分かるなと思った。
なんとなくだけど、トモロヲさんは、より多くの女性が自身を投影しやすい、普遍的な恋愛映画にしたくて多部ちゃんをキャスティングしたんじゃないかなーと思う。多部ちゃんも言ってるけど、一生の、運命の恋っていう訳ではなく、人生の中に誰しもいくつかある恋愛の一つをそのまま切りとってみましたっていう感じの。
でも、全ては原作読んでから言えよって話なので、近々読んでみようと思います。


さておきとにかく、キャスティングが最高だった。

もう、好きな人しか出てない映画で最高でした。中村倫也宮藤官九郎が思いがけず出てきたときは笑っちゃいましたが。もうキャストが豪華すぎて参っちゃいました。
大体、主人公と恋愛関係になる男性陣が柄本佑菅田将暉綾野剛とか、多部ちゃんどんだけ男の趣味がいいのかと(そういう問題じゃない


柄本佑は生き霊のように何度も現れて、いい感じに気持ち悪かったです。あんだけカッコいいのにこんなに気持ち悪くなれるの、っていう男性がわたしは好きで、今デスノート忍成修吾窪田正孝が一つの画面に収まってるのを見ると悶絶しそうになります。MOZUの長谷川博己も最高だったね。
柄本くん演じる正樹は、原作だともっとひどいDV彼氏だそうですが、映画でもなかなかなクズ。
「好かれて付き合うパターンばかりだから」とか知らないわ、どうでもいいわ。そんなに自分を真剣に激しく好きになって態度に示して欲しければ、彼女に要求してばっかの前にそれに見合うための努力しろよバカって思いながら見てました。
最後も酷くて、ピンクローターを洗う多部ちゃん(洗い方が可愛かった)に、「やるよ、それ。誰でもいいんだもんな、お前」ってなんだそれ。多部ちゃんが捨て方に困っちゃうじゃん!!しかもそんな透明のビニール袋に入れて捨てようとしないで多部ちゃん。
でも舞台挨拶で、「恋人にするなら正樹」って多部ちゃんに選ばれていて、報われてよかったねって思いました。喜び方可愛かった。

菅田くんもなんでもできる役者だね!
初めてのキスシーンが多部ちゃんだったそうで、それをキスシーンの収録前に言っちゃうあたりも可愛いです。
PG12でここまでできるんだなっていう感のあるピースオブケイクですが、最もいやらしかったのが居酒屋のトイレ前での菅田くんとのキス。あれだけで1000円くらい取っていい映画だと思います。
菅田くんが多部ちゃんに迫ってキスするまでの応酬が二人ともすごいリアルだった。

綾野剛は、わたしの好きな綾野剛だった笑
もともとそんなに好きじゃないんだけど、だらしないふらふらした、でも憎めない男性が嵌っててすっごいよかったよ。うん、すっごいよかった。
好きなシーンは、アパートの前で「UFOでも呼んじゃう?」とかふざけちゃった後に、志乃から畳み掛けるように告白されて「うーーーーん」っていう反応をするところ。
いそう、こういう男。こういう反応ありそう。めっちゃリアル。
それと、志乃の部屋に上がりこんだときのTシャツの脱ぎ方が好きだった。脱がせ方も。
あと、やっぱり旅館での志乃との絡みが最高だった。喧嘩してるときになんか笑っちゃうのも分かるし。なにより楽しそうでよかった笑

でもなんと言っても、わたしの心を持っていったのは、多部ちゃんを除いてはこの人がダントツ。
峯田和伸
もう、もう素敵以外の言葉が出てこない。あれはずるいよ。歌わせたらもう全部持ってくじゃん。声素敵すぎる。しかも可愛い。「初めて会ったときから決めてました」って可愛すぎか。わたしが志乃ならぜったい千葉だよー。抱かれたい。

木村文乃ちゃんは、パブリックイメージの安定の文乃ちゃん。
松坂桃李くんもはまってたね。最後のボウタイブラウスが似合いすぎてて最高でした。仕草から何から完璧。

唯一、どうして?と思ったのがあかり役の光宗薫さん。初見。
ミステリアスでスレンダーな、みたいな設定らしいけど、身体の大きな、ぬぼーっとした人だなって感じで少し残念だった。
なんていうか、全然役として印象に残らなくて、また役として全く惹かれなくて。
でも、ドラマとか漫画で、たまにいるよねっていう。
傍からみて、その男性の女としてしか価値がなさそうな、だけどその人はその女にぞっこんで、恋愛はそれぞれにしか分からない世界があるよねっていう感じの、そんな女の人。
志乃のことを「めんどくさい女」というなら、あかりはその100倍くらいうっとうしい。
最後サイン会のときは、スーツ姿でシュッとしてて、すっきりして見えたし、もしかしたらのっそりした感じの演技も、敢えての演技だったのかもしれないけれどね。綾野剛×ミステリアスな女、は「最高の離婚」の真木よう子が最強すぎたので、そこと比較して見てしまったのも一因かも。

明日は多部ちゃんメインの感想を。